壊れゆくふたり

妻が笑っている。
声も出さずに、それでも横隔膜は痙攣させながら、笑っている。
身体が小刻みにバウンドしつつ、笑っている。
「どうしたの? なに笑ってんの?」
それでも笑いは止まらない。
なおも声にならない大笑いを続けている。
そしてお釜を指さす。
中を見ると、沸騰したお湯が下の方に溜まっている。
「・・・?・・・なにこれ?」
笑いながら、やっとのことで声をひねり出す。
「それ・・・(笑)・・・ごはん・・・(笑笑)・・・(笑笑笑)・・・」
「え、ごはんって、ただのお湯じゃん」
「だから・・・(笑)・・・ごはん炊こうとして・・・(笑笑)・・・ひぃ・・・」
つられて私も笑い出す。
「なになに?・・・(笑)」
「(笑笑笑)・・・お米入れるの忘れたの・・・(笑笑笑笑笑笑)」
思わず私も吹き出してしまう。
「おまえ(笑笑笑)なにやってんの? バカ?(笑笑笑)」
「(笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑)」
「(笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑)」
「(笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑)」
だめだ、可笑しすぎて死にそうである。
「それで、今夜のごはん、どうすんの?」
「(笑笑笑笑笑笑笑)これ」
お湯の入ったお釜を指さす。
「(笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑)」
「(笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑)」
息が出来ない。
失禁寸前である。
慌ててトイレに駆け込む。
危ないところだった。
戻ってきて、すこし落ち着いたところで、コーヒーを飲もうと思う。
湯を沸かしている間に、コーヒー豆を用意する。
ペーパーをセットし、お気に入りのコーヒー豆を入れる。
お湯が沸いたので、カップに湯を注ぐ。
妻がまた、声を出さずに大笑いを始める。
「(笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑)」
「なんだよ(笑)今度はなに?」
妻が指を差すその先には、マグカップがある。
私がケトルの湯を注いでいるマグカップが・・・
妻が何故笑っているのか、私も気がついた。
私はコーヒー豆をセットしたフィルターをカップの上に置かずに
マグカップに湯を注いでいたのだ。
マグカップには、ただの湯が溜まっていることは言うまでもない。

その後、妻と私は窒息寸前まで笑い転げた。
笑う門には福来る、とか、笑うことは健康にいい、とか言うが
笑いすぎは果たして健康にいいのだろうか・・・

ふたりとも、だいぶ良い感じに壊れてきた。
それでも年をとるのは、楽しい。

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soul station について

物質界と非物質界を行ったり来たり。 自らのヘミシンク体験記録。

ヘミシンクのことを初めて知ったとき、「ホントかよっ!」 と半信半疑だった。 同時に 「ホントだったら凄いな!」 と心の何処かで興奮した。 これは自分で確かめるしかない。 ということで、自らのヘミシンク体験を記録し始めた。

プロフィール

jazz

Author:jazz
プラス思考でもマイナス思考でもなく、ニュートラルが一番と思って生きてきたが、ヘミシンクを通して、やっぱりプラス思考の方が理に叶っていると思い始めている。 趣味はヘミシンク、音楽はジャズ、飲み物はコーヒー、そして機械式腕時計の好きな中年オヤジである。

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